石川啄木:頬につたふ なみだのごはず

石川啄木 一握の砂 2頬につたふ なみだのごはず  石川啄木 一握の砂 2頬につたふ なみだのごはず


「のごはず」=ぬぐわず=拭わず

歌集『一握の砂』の冒頭歌は、
「東海の・・・」ですが、

歌集の書名『一握の砂』は、あきらかにこの歌から引用されたものと思われます。

啄木は、歌集発刊を思い立ち、その準備を進めている時点では、
歌集の書名を「仕事の後」と決めていたのですが、
最終的に『一握の砂』に変更しました。

『一握の砂』の冒頭部分10首は海辺漂泊の歌を並べていて、
この歌集全体が、漂泊をテーマにしていることを暗示しているようです。

冒頭10首を並べてみます。
(ルビ省略、改行はスペースで示す)
東海の小島の磯の白砂に われ泣きぬれて 蟹とたはむる
頬につたふ なみだのごはず 一握の砂を示しし人を忘れず
大海にむかひて一人 七八日 泣きなむとすと家を出でにき
いたく錆びしピストル出でぬ 砂山の 砂を指もて掘りてありしに
ひと夜さに嵐来りて築きたる この砂山は 何の墓ぞも
砂山の砂に腹這ひ 初恋の いたみを遠くおもひ出づる日
砂山の裾によこたはる流木に あたり見まはし 物言ひてみる
いのちなき砂のかなしさよ さらさらと 握れば指のあひだより落つ
しっとりと なみだを吸へる砂の玉 なみだは重きものにしあるかな
大という字を百あまり 砂に書き 死ぬことをやめて帰り来れり

もしも、『一握の砂』が「仕事の後」という書名になり、
たとえば、こんな歌、

 こころよき疲れなるかな 
 息もつかず 
 仕事をしたる後のこの疲れ

などが冒頭歌として採用されていたら、
まったく趣きの違う歌集、お行儀のよい、
つまらない歌集になっていたかもしれません。

ところで、
頬に伝っている涙も拭かずに、
一握の砂を示した人は誰だったのでしょう?

男性なのか、女性だったか?

特に、冒頭10首には「砂」が頻繁に詠われますが、

「砂」は「時」を表現していて、
つかもうとしてもつかみきれない、など、
人生になぞらえているとも解釈されます。

  
posted by GG at 16:51 | Comment(0) | TrackBack(0) | 心に残る歌
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